
◆ 授乳の合間に胸がドキドキして不安な方へ
赤ちゃんのお世話をしているとき、急に胸がドキドキする。横になっても脈が気になり、「眠れていないせい?」「授乳中だから仕方がない?」と不安になることはありませんか。
産後は睡眠が細切れになり、食事や水分補給も後回しになりがちです。残暑が続く時期は、外気と冷房の差も重なります。ただし、授乳中の動悸を育児疲れだけで片づけることはできません。いつから、どのくらい続くか、息苦しさや胸の痛みを伴うかを確認し、気になる症状は医療機関へ相談することが大切です。
◆ 授乳中の動悸には、いくつかの背景が考えられます
動悸は「心臓が強く打つ」「脈が速い」「脈が飛ぶ」と感じる症状の総称で、背景は一つではありません。産後の出血などによる貧血では、全身へ酸素を運ぶヘモグロビンが不足し、動悸、息切れ、疲労感、立ちくらみなどが現れることがあります。授乳期は栄養の必要量も変わるため、自己判断で鉄剤やサプリメントを増やすのではなく、血液検査を含めて産婦人科や内科へ相談しましょう。動悸だけを理由に授乳の中止を決めず、受診時に授乳中であることを伝え、薬の使用を含めて医師や薬剤師へ確認してください。
また、産後は甲状腺の働きが変動し、体調不良につながることがあります。甲状腺ホルモンが多い時期には、動悸、発汗、手のふるえ、体重の変化などがみられる場合があります。脈の乱れそのものや、薬・カフェインの影響なども確認が必要です。
まれですが、妊娠中から産後に心臓の働きが低下する周産期心筋症もあります。息切れが強くなる、横になると苦しい、むくみが急に増えるといった変化は、早めに医療機関へ相談してください。
◆ 鍼灸は、緊張やこわばりをやさしくケアする選択肢
鍼灸院では、動悸の原因を診断したり、心臓や甲状腺の病気を治療したりすることはできません。まず医療機関で必要な検査や治療を受けることが前提です。
そのうえで当院では、首肩や背中のこわばり、冷えの感じ方、睡眠、食事、産後の疲れ方などを丁寧に伺います。細い鍼や温度を調整したお灸を使い、横向きや仰向けなど無理のない姿勢で、緊張している部位をやさしくケアします。短い時間でも体を休め、呼吸を急がずに過ごせる環境づくりを大切にしています。
感じ方や変化には個人差があり、動悸への効果や必要回数を一律にお約束することはありません。授乳の時間や産後健診の予定も伺い、医療機関での診療を妨げない範囲でケアを考えます。
◆ 当院での施術のながれ
初めに、出産からの期間、動悸が起こる時間、脈の感じ方、続く長さ、息切れ・胸痛・めまいの有無を確認します。既往歴、服用中の薬、健診や血液検査の結果が分かるものがあればお持ちください。受診が必要と考えられる症状がある場合は、施術より医療機関への相談を優先します。
次に、姿勢や呼吸、首肩、背中、手足の状態を確認し、その日の体調に合わせて刺激量と姿勢を選びます。授乳中で同じ姿勢がつらい方、睡眠不足で長く横になることが負担な方には、途中で姿勢を変えたり施術時間を調整したりします。施術後は体の反応を確かめ、日常で続けやすい休み方を一緒に考えます。
◆ セルフケアと、医療機関へ相談する目安
ツボは、手首の内側にある「内関(ないかん)」を使います。手首のしわから指3本分ほど肘側、2本の腱の間を、反対の親指で痛くない強さでゆっくり押します。皮膚に傷や腫れがある場所は避け、気分が悪くなったら中止してください。ツボ押しは医療受診の代わりにはなりません。
生活習慣では、授乳の前に飲み物を手の届く場所へ置き、少量ずつ水分をとる流れをつくりましょう。食事を抜かず、カフェインを多く含む飲み物やエナジードリンクをとった時間も含め、動悸が起きた時刻・長さ・一緒に出た症状をメモすると、受診時に説明しやすくなります。
これまでにない強い動悸、胸の痛み、安静でも続く息苦しさ、失神、意識が遠のく感じがあるときは、速やかに医療機関へ。横になると苦しい、むくみや咳が急に強くなる、症状が繰り返す・長引く場合も、産婦人科、内科または循環器内科へ相談してください。
◆ よくあるご質問
Q1. 鍼は痛いですか?
感じ方には個人差がありますが、細い鍼を使い、体調や不安に合わせて刺激量を調整します。初めての方には使用する鍼と姿勢を事前に説明します。苦手な刺激は我慢せずお伝えください。
Q2. 何回くらい通えばよいですか?
動悸の背景や体調は人によって異なり、まず医療機関での確認が必要な場合もあります。一律の回数はお約束せず、初回の確認と施術後の反応、育児の予定を踏まえて無理のない見通しをご相談します。
Q3. 健康保険は使えますか?
鍼灸の保険適用には対象となる状態や医師の同意など条件があります。「授乳中の動悸」だけで適用されるとは限りません。当院での取扱いと加入している保険者の支給条件を、予約前にご確認ください。
◆さいごに
授乳中の動悸は、休息不足だけでなく、貧血、甲状腺の変化、脈の乱れなど複数の背景が考えられます。我慢して育児を続けるのではなく、まず医療機関で必要な確認を受けることが安心への第一歩です。そのうえで、体の緊張やこわばりをいたわる方法の一つとして、無理のない鍼灸ケアをご相談ください。
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執筆・監修:榊原 義盛
はり師・きゅう師(国家資格)/明大前はり灸院 院長
臨床歴約10年。自律神経の不調と首肩腰の痛みを中心に、延べ1万名以上の施術を担当しています。
最終更新:2026年9月16日
■ 明大前はり灸院
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